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このセレクトでは、ホルモンの働きと密接に関係する感情を制御したり、逆に利用したりする方法を紹介しています。


感情を制御する (2012.1.29)

前回は、脳というのはホルモンに浸けられたコンピュータであるというお話をしました。そして、感情というか気分によってその働きが大きく変わることを学びました。

私たちの経験によると、いい気分のときに記憶された出来事は、いい気分のときに思い出されやすいですし、逆にその出来事を思い出すと自然にいい気分になります。
悲しいとき、腹が立っているとき、怖がっているときも同様です。
さらに、それが何であれ、強い感情を経験しているときに記憶したことは鮮明に残ります。
退屈し、やる気のでないときには、いくら憶えようとしてもなかなか頭に入りません。
それは、脳の作りがそうなっているからなんですね。

さて、感情は間脳で生じ、その情報が脳内ホルモンの形で脳のすみずみまで長大な無髄神経によって届けられるわけですが、では、そもそも感情はどのようにして芽生えるのでしょうか。

そのメカニズムはこんな具合だと考えられています。

たとえばあなたが好きな人の事を想って胸キュンとなったとします。
このとき「愛情」という感情が現れたわけですが、これは
1) 脳内で好きな人の記憶が呼び出され
2) 前回述べた「その記憶と関連づけられた感情の記憶(この人といると『うれしくて切ない』など)」が呼び起こされ
3) それが間脳に伝わってホルモン神経を駆動させ感情が生じた
のです。
記憶が呼び出されて感情が生じるんですね。

さらに、
4) うれしい気持ちが運動神経に「頬の筋肉をゆるめよ」という指令を出し、自律神経を経由して内臓系に「脈拍」を上げ(ドキドキ)、体温を上げる(ポーッ)よう指令を出し、
5) 顔がほころび、心臓がドキドキし、頬が紅潮したことが、感覚器官を経由して脳にフィードバックされ、
6) ふたたび「愛情」の記憶が強化されます。
つまり、感情によって生じた身体変化が感情の記憶を強化するわけです。
よく知られているように、悲しいから涙が出るだけでなく、涙が出るから悲しいのです。

以上見たように、「記憶→感情→表現」と「表現→感情→記憶」の二つの流れがあります。
このうち私たちが意図して変える事が出来るのは表現だけです。
感情は向こうから勝手にこみ上げてくるものですし、記憶もかなりそうです。
だから、こころをコントロールするひとつの方法は、意図して表現を行うことなのです。

楽しくなくても笑ってみる。
すると、不思議な事にうれしい気分になる。
うれしい気分になると、楽しい記憶がよみがえって来ます。

いやな記憶が浮かんで来たら、意図してそれを断ち切ります。
NHKの「ためしてガッテン」ではそれを、「笹舟に乗せて流すイメージ」と言ってました。
そして、気分は楽しくなくても楽しいことをし、無理に笑ってみるのです。
からだを動かす事の気持ち良さを体験している人なら、運動してみるのも効果的です。
一度でうまく行かなくても、あきらめずに何度も繰り返して下さい。
 断ち切る
 笑う
 からだを動かす
そのうちに、いやな記憶の登場する回数が減って来ますよ。

あやこ先生が、日常生活の中で「いい気持ち」や「いい気分」「ちょっとした愉しみ」を積み重ねなさいと言っているのは、脳科学的にも意味のあることだったのです。


感情を利用して外国語を身につける(2012.2.5)


前回は、感情(ホルモン)と記憶(大脳コンピュータ)の関係を利用して感情を制御する方法について述べました。
例として、いやな記憶をカットして楽しい気分に誘導する方法を取り上げましたが、ここではもうひとつ、外国語をハイレベルで習得する方法について述べてみたいと思います。

外国語をマスターするのは誰にとっても大変です。
膨大な数の単語の意味を知らなくてはなりません。
長大な文章を読み、自分でも正しい文章を書くために、文法の知識が必要です。
外国語で話された文章を聴き取るヒアリングの能力と、言いたいことを自由に話すスピーキングの能力も求められます。
そのためには正しい発音をマスターしなくてはなりません。

・・・なんて考えること自体が、実はもう間違いです。

言葉というものは、単語、文法、ヒアリング、スピーキング、発音などと分かれて存在しているわけではありません。
全部が渾然一体とした有機的な存在です。
それをこんなふうに分割して勉強しようとすることが、そもそもおかしいのです。

私の乏しい見聞から言える事は、外国語をマスターする近道は外国に行ってそこで暮らす事のようです。
現地に行けば、たとえ片言ででも話し、聞かないことには生きて行けません。
分からなければ身振り手振り、絵を描いたりして必死に相手とコミュニケーションしようとするはずです。
こんな発音だと恥ずかしい、なんて思う余裕はまったくありません。そして半年経ち、1年が過ぎる頃には、あなたは立派な外国語の使い手になっています。
人間はそのくらい適応力に富んだ生き物なんです。

でも、誰もが(たかが)外国語ひとつを習得するために1年も海外で暮らすわけには行きません。
では、そういう人たちは一体どうしたらよいでしょうか。

答えは感情と組み合わせて言葉の全体を記憶すること、です。
そのために、外国人が見ている面白い映画やテレビドラマのDVDを買って来て観るのです。
もちろん、字幕は消して下さい。
そして、興奮し、笑い、泣き、登場人物になりきって外国語を聴き、話します。
話すと言うのは、登場人物のせりふを口まねする事で、シャドウイングと言います。

最初は聴き取れたせりふをひと言二言まねるぐらいがせいぜいですが、気にする必要はありません。
何度も繰り返し聴いていると、だんだん耳が慣れて増えていきます。

何度も繰り返し、と言いましたが、そのためにはあなたが大好きな映画なりドラマなりがなくては始まりません。無趣味で感動の薄い方は、あきらめた方がよいでしょう。
私は映画「13デイズ」を最初の教材として使いましたので、ケビン・コスナーのなまりが身につきました(笑)。

ただし、甘く見てはいけません。
映画一本は2時間から3時間かかります。
それを一気に観るのですから、最初は夜中しか時間は取れません。
ある程度慣れて来たら半分に分けて観、さらに慣れたら毎日の通勤電車の中でiPhoneで観ます。
当然口の中でぶつぶつ言いますが、周囲の目など気にしてはいけません。
(iPhoneで観るためは、DVDをパソコンのハードディスクにリッピング(コピー)し、それをiPhoneと同期します。)

もうひとつ、外国の文化をある程度知ることも大事です。
そういう知識がないと、彼らの話している事が本当には理解出来ず、映画やドラマに感情移入できないからです。

たとえば西洋諸国の場合、キリスト教についての知識は必須と考えてよいでしょう。そのためには、聖書をざっと斜め読みしておくことが効果的です。
また、世界史の知識も不可欠ですし、古典文学の知識も会話の前提となります。だから、シェークスピアくらいは読んでおいた方が良いかもしれません。
その上で、英字新聞を取って現代の世界を、日々彼らの言語で理解する努力も求められると思って下さい。
現在は、「週刊ST」のように、単語の解説が付いている英日ちゃんぽんの週刊新聞もありますから、英語の場合はこれを購読するのも良いでしょう。

最後に、外国語をペラペラと自由にしゃべり、分厚い洋書を苦もなく読んでいる自分のイメージを、いつも頭の中で思い描いて下さい。勉強しているときには、自分が日本ではなくその国にいると思い込んで下さい。
そのような想像が、自分が外国にいるという感情を産み出すからです。

なんだ、大変だなあ、と思われましたか?
当たり前です。
かの地の子供が24時間365日、何年も外国語漬けになって学んだ言葉を短期間で身に付けようというわけですから。
でも、たぶん、感情を最大限利用するこの方法はかなりたしかな外国語習得法だと、私は思います。

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